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歌うということ vol.2 震える肺、支える足場、そして感情のゆくえ|中尾建設工業(株)ショールーム
2025.10.03
MO-TOYです。
前回、「息は肺に吸うもの」とお話ししました。当たり前すぎる答えに拍子抜けされた方もいるかもしれません。しかし、ここからが「自分という楽器」を鳴らすための、本当の冒険の始まりです。
肺にたっぷりと空気が満たされると、その重みで、肺の下にあるドーム状の筋肉「横隔膜」がぐっと押し下げられます。この横隔膜が下がった状態こそが、僕たちオペラ歌手がよく口にする「支え」の正体です。
かつて130kgの体重があった頃、僕の身体は、いわば巨大な大聖堂のようなものでした。しかし、重ければ良い音が鳴るわけではありません。大切なのは、その巨大な空間をいかに制御し、無駄のない「足場」を築くか、ということに後になって気づきました。
横隔膜が安定した足場となって肺を支える。 すると、そこから生まれる息の流れは、単なる「空気の移動」ではなくなります。それは、まるで能楽師が雲の上を歩くように静かで、かつ強靭な「意志を持った流れ」へと変わるのです。
この「豊かな息の足場」があって初めて、僕たちの声に「感情」という名の血が通います。
感情は、決して喉だけで作るものではありません。 「悲しい」という響きも、「狂おしいほどの喜び」も、すべてはこの安定した息の流れの上に乗って、客席へと運ばれていきます。喉を締め付けて絞り出すのではなく、足場を固め、解き放たれた息が自然と「震え」を帯びる。その震えこそが、聴く人の心のあわい(間)に届く本当の歌声になるのだと、僕は信じています。
「肺」という器に空気を取り込み、「横隔膜」という土台でそれを支える。 一見、理科の授業のようなこの仕組みが、実はあなたの人生の喜怒哀楽を音楽に変える、唯一の魔法なのです。
さて、次回はこの「足場」を生かす「息の色」についてお話ししましょう。どうぞ、お楽しみに。
次回のうたごえ喫茶は10月28日!お楽しみに
